2026.09.17
自分で帳簿を付ければ、税理士に払う分を抑えられるのではないか。個人事業主の方から、よく聞かれることです。
答えは条件によって変わりますので、判断の材料になりそうなことを並べてみます。
領収書を見て、日付と金額と科目を入れていく。ここが入力です。会計ソフトを使えば、銀行やカードの明細は自動で入ってきますし、領収書も撮れば読み取ってくれます。ここ数年で、たしかに楽になりました。
止まるのは、その先です。
入ってきた明細が、手元の領収書と合っているか。同じ支払いを二重に入れていないか。事業のものと私用のものが混ざっていないか。先月の残高と今月の残高がつながっているか。決算のときに、在庫や資産をどう扱うか。
それから、売上や仕入は、お金が動いた日ではなく、品物を渡した日や、仕事が終わった日で記録します。3月に納品して入金が4月なら、売上は3月です。仕入や経費も同じで、3月に届いた品物の支払いが4月でも、3月の経費になります。
ご自身で記帳されている場合、この確認まで手が回らないことがほとんどではないかと思います。とりあえず入れる、というところで止まってしまう。それが悪いという話ではなく、確認まで含めてお一人でやるのは、かなり重いのです。
確定申告には、白色と青色の二つがあります。
青色は、あらかじめ税務署に届け出たうえで、決められた形で帳簿を付けて申告する方法です。手間がかかるぶん、いくつかの特典が用意されています。
そのひとつが、青色申告特別控除です。最大で65万円を所得から引くことができます。売上が減るわけでも経費が増えるわけでもないのに、税金を計算するうえでの所得だけが65万円下がる、という仕組みです。
見落とされがちなのは、この控除が所得税だけでなく、住民税と国民健康保険料にも効くことです。国民健康保険料は、青色申告特別控除を引いた後の所得をもとに計算されるためです。
たとえば、大津市にお住まいで40歳から64歳の方の場合を見てみます。65万円の控除で変わる額は、次のようになります。
| 所得税5% | 所得税10% | 所得税20% | |
|---|---|---|---|
| 所得税 | 32,500円 | 65,000円 | 130,000円 |
| 住民税(10%) | 65,000円 | 65,000円 | 65,000円 |
| 国民健康保険料(12.25%) | 79,625円 | 79,625円 | 79,625円 |
| 合計 | 約18万円 | 約21万円 | 約27万円 |
所得税の税率は、課税される所得が195万円までなら5%、330万円までなら10%、695万円までなら20%です。これより上の税率の方は、さらに大きくなります。
国民健康保険料の12.25%は、令和8年度の大津市の場合で、基礎分7.1%・後期高齢者支援金分2.5%・介護分2.4%・子ども子育て支援金分0.25%を合わせたものです。このほかに、所得税には復興特別所得税が2.1%上乗せされます。
年間でおよそ20万円前後。しかも、これが毎年のことになります。
なお、所得が出ていない年には、この計算は当てはまりません。この控除は所得の金額までしか引けませんので、赤字をさらに増やすことはできないためです。ただ、その場合でも青色にしておくと、その赤字を3年間繰り越して、黒字が出た年の所得から引くことができます。
控除の額は、三段になっています。
まず土台が55万円です。複式簿記で記帳して、貸借対照表・損益計算書・所得の金額の計算に関する明細書を確定申告書に添付し、期限内に提出すること。これが揃って55万円になります。
そのうえで、e-Taxで申告書と決算書を送るか、帳簿を決められた形の電子データで保存して届出を出すか。どちらかができていれば65万円です。
土台が崩れると10万円になります。貸借対照表を付けていない、複式簿記になっていない、期限に遅れた。このどれかがあると、e-Taxで出していても10万円です。
会計ソフトを使っていれば、決算書の形は整います。貸借対照表も損益計算書も出てきますので、要件を満たしているように見えます。
ただ、ソフトは入れたとおりに出すだけです。中を見てみると、現金の残高がマイナスになっていたり、通帳の残高と帳簿の残高が合っていなかったり、年の初めの残高が入っていなかったりすることがあります。こうなっていると、複式簿記で記帳したことにはなりません。
こうした状態で65万円を引いていても、誰かがすぐに指摘してくれるわけではありません。何年もそのまま続いていることがあります。
要件が細かく、分かりにくいところだと思います。ご自身の決算書を一度ご覧になって、気になるところがあれば、税務署か税理士に聞いてみてください。
ご自身で帳簿を付けることには、それなりの意味があります。数字が手元にあれば早く動けますし、自分の商売のお金の流れが分かるようになります。できるに越したことはありません。
ただ、費用を抑えるためだけに、自信のないまま時間をかけているのなら、一度考え直してみてもいいかもしれません。青色申告をきちんと使えているかどうかで、先に見たとおり年間20万円前後が変わります。
当事務所が帳簿を付ける仕事を基本料金に含めているのは、記帳の時間ではなく、出てきた数字をもとに、次の一手を考える時間に使っていただきたいからです。金額は料金のページに出しています。ご相談だけでもお気軽にどうぞ。
文責:口中税理士事務所 税理士 口中 満久
この記事は2026年9月17日時点の法令等にもとづいています。制度は改正されることがありますので、ご確認のうえお読みください。一般的な取扱いをまとめたものですので、個別の判断は事情により異なります。具体的なご相談はお問い合わせください。